カルダモンだもん

Cardamom - damon

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カルダモンロールについて

スウェーデンのカルダモンロール
スウェーデンのカルダモンロール

カルダモンロールとは

カルダモンロールはスウェーデンでポピュラーな菓子パンです。簡単に言うとシナモンロールのカルダモン版。生地やフィリングにカルダモンが練りこまれています。スウェーデンではほとんどのパン屋・カフェでカルダモンロールを目にすることができます。

本サイトでは基本的にカルダモンロールの名称を用いますが、英語ではカルダモンバン(単数:Cardamom bun、複数:Cardamom buns)の名称が一般的です。本場スウェーデンでは、カルデムンマブッレ(単数:Kardemummabulle、複数:Kardemummabullar)と呼ばれています。Kardemumma:カルダモン。bulle:菓子パン(「丸いもの」が語源)、複数形は「bullar」。

スウェーデンのカルダモンロール
スウェーデンのカルダモンロール「Kardemummabulle」。
黒く見えるつぶつぶが粗びきのカルダモンです。

カルダモン好きで知られる北欧・スウェーデンのカルダモンロールにはカルダモンがたっぷり使われていて、その香りをダイレクトに感じることができます。お店により細かく挽いたカルダモン(といっても粉末状ではなくつぶつぶが見えるくらいの細かさです)を使っているところ、粗びきのカルダモンを使っているところがあります。細かいカルダモンを使っているものは、ひときれ口に入れただけで、カルダモンの爽やかな香りが口のなかいっぱいに広がります。一方粗びきのカルダモンを使っているものは、かみしめるたびにカルダモンが口の中ではじけて香りが広がります。タイプは異なりますがどちらも魅力的です。

スウェーデンのカルダモンロールには、必ずホールのカルダモン(の種子)を挽いたものが使われます。日本では粉末のカルダモンのほうが入手しやすいのですが、あらかじめ粉末にされたものと、ホール(の種子)から挽いたものでは風味が全く異なります。粉末のものは挽かれてから時間がたっているためか、莢(サヤ=種子を包む殻の部分)が一緒に挽かれているためか、カルダモン最大の魅力である、爽やかな香りに劣ります。また、カルダモンの香りは熱に弱いという弱点があります。そのため、カルダモンロールのようなオーブンで焼く料理でカルダモンの香りを生かすには、①種子のみを使う直前に挽いたものを使う、②熱を加えた後もカルダモンの香りが残るようにたっぷり入れる、③可能であればできるだけ熱を加えすぎないように調理する、ことが重要です。

スウェーデンのシナモンロールとカルダモンロール

カルダモンロールはシナモンロールのアレンジとしてスウェーデンで生まれました。

シナモンロールの発祥については諸説あるようですが※1、スウェーデン人は「シナモンロールは1920年代にスウェーデンで生まれた」と主張しています※2。スウェーデンでシナモンロールが一般に広まったのは1950年代以降になります※2。

スウェーデンのシナモンロールは通常、シナモンだけでなく少量のカルダモンを加えて作られます。このシナモンロールからシナモンを抜き、カルダモンを増量したのがカルダモンロールとなります。したがって作り方はシナモンロールとほとんど同じで、シナモンロールとカルダモンロールは切っても切り離せない関係にあります。

ただ、シナモンロールが北欧のみならず全世界に広まったのに比べるとカルダモンロールはスウェーデン以外ではマイナーです。隣国のノルウェー(スウェーデンから伝わった?)やフィンランド(Kardemummapulla)にはカルダモンを主役にしたパンがありますが、もうひとつの隣国であるデンマークではカルダモンロールを目にすることはまずありません(ただ、近年デンマークでもカルダモンロールブームが来ているのか、一部スウェーデンスタイルのカルダモンロールを売るお店がでてきています)。

一方、最近のスウェーデンでは、カルダモンロールの人気がとても高くなっています。スウェーデンを代表するベーカリーチェーン Fabrique(シナモンロールとカルダモンロールで有名)の共同オーナーであるCharlotta Zetterström によれば、Fabriqueをオープンした2008年にはシナモンロール60%、カルダモンロール40%の売り上げ比率だったのに対し、2015年時点ではその比率が逆になったそうです※3。なお、スウェーデンのひとりあたりカルダモン消費量はフィンランドと並びヨーロッパでもトップクラスです(カルダモンの原産国インドより多い→詳細はこちら)。その多くがカルダモンロールに使われているのではないかと思います。

スウェーデンのカルダモンロールとシナモンロールは作り方も形もほぼ同じです。スウェーデンのシナモンロール・カルダモンロールで特徴的になのは細く切った生地を結んで作るノット(knot)型と言われる成形です。同じノット型でも、生地の結び方・巻き方にはお店や家庭によって多くのバリエーションがあります。日本では最近「ストックホルム巻き」なんて呼ばれ方もしているようです。ちなみに、スウェーデンでは日本でおなじみの渦巻型のシナモンロールやカルダモンロールを目にすることはほとんどありません。

ノット型(上面)
ノット型(側面)

スウェーデンのシナモンロール・カルダモンロールにアイシングはほどこされません。代わりに砂糖がトッピングされています。多くのお店では、シナモンロールにはパールシュガーと呼ばれる白い大粒の砂糖が、カルダモンロールにはグラニュー糖タイプの砂糖がかけられています。明確な決まりがあるわけではないので絶対ではありませんが、これを目印にシナモンロールとカルダモンロールを見分けることもできます。

カルダモンロールとシナモンロール
ストックホルム・アーランド空港で売られていたカルダモンロールとシナモンロール。
カルダモンロール(左)にはグラニュー糖が、シナモンロール(右)にはパールシュガーがトッピングされています。

※1 シナモンロールの起源についてはスウェーデン説のほか、イギリス説やドイツ説があります。「What is the origin of cinnamon rolls?」https://www.quora.com/What-is-the-origin-of-cinnamon-rolls(2019/3/2閲覧)

※2 「5 Facts About Cinnamon Buns」https://www.scandikitchen.co.uk/15-facts-cinnamon-buns/(2019/3/2閲覧)

※3 「The Best Bakeries for Stockholm’s Favorite Buns」https://www.wsj.com/articles/the-best-bakeries-for-stockholms-favorite-buns-1446057450(2019/3/2閲覧)