カルダモンだもん

Cardamom - damon

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カルダモンの主な生産国と消費国はどこか?

結論:カルダモンの主要生産国はグアテマラとインド。主要消費国はサウジアラビアとインド。

1. はじめに

カルダモン(Elettaria cardamomum *)はどこで生産され、どこで消費されているのか。生産国と消費国について調べてみると意外な実態が判明しました。カルダモンの生産量世界一や、ひとりあたりのカルダモン消費量世界一は意外な国でした。

* いわゆるグリーンカルダモン:真のカルダモン、スモールカルダモンなどとも呼ばれます。

2. カルダモンの生産

2.1. カルダモンの生産国

図1にカルダモンの生産国を示します。主要な生産国は青で示したインドと赤で示したグアテマラになります。そのほか小規模な生産国として、緑で示した、タンザニア、スリランカ、パプアニューギニア、ホンジュラス、コスタリカ、エルサルバドル、タイ、ベトナムなどがあります[1]。

カルダモンの生産国
図1. カルダモンの生産国(日本~アメリカ大陸間の縮尺はデフォルメしています)

2.2. カルダモンの原産地とインドにおける生産地域

カルダモンは南インド原産です[2]。西ガーツ山脈の森林地帯に自生しており、現在ではこの地域で商業的な栽培がおこなわれています。西ガーツ山脈南部の標高800~1500mの丘陵地帯では特にカルダモン栽培が盛んで、このエリアは「カルダモンヒルズ」と呼ばれています[1](図2)。カルダモンヒルズを中心にケララ州がインドにおける大半(60%[3]~89%[4]と推定)のカルダモンを生産しています。カルダモンはケララ州のほか、カルナータカ州、タミル・ナードゥ州でも生産されています[3]。

インドにおけるカルダモンの生産地
図2. インドにおけるカルダモンの生産地

2.3. グアテマラにおける商業栽培の成功

カルダモンはインドもしくはスリランカから1920年頃にグアテマラに持ち込まれ1930年代から商業栽培が試みられてきました[1]。グアテマラの標高900~1500mの山地の気候はカルダモンの生産にとって理想的であり、カルダモンの生産はその後急速に拡大しました。グアテマラ現地ではカルダモンの需要がないため、生産された全量が輸出されます[1]。グアテマラからの供給の増加は国際マーケットにおけるカルダモンの低価格化をもたらしました。グアテマラにおける単位面積あたりの生産性はインドを上回り、その生産コストはインドの半分程度です[1]。

2.4. カルダモン生産量の推移

カルダモンの生産量は過去数十年で大幅に増加してきました。世界におけるカルダモンの年間平均生産量の推移を図3に示します。

カルダモン生産量の推移
図3. カルダモン生産量の推移[※1]

1970年代からの2010年代にかけ世界の総生産量は5倍近くに増加しました。カルダモンの主要生産国はインドとグアテマラで、この2か国が世界生産の9割以上を担っています。現在の生産量首位はグアテマラです。紀元前以来、過去数千年にわたりインドは世界最大のカルダモン生産国でしたが、1980年頃にグアテマラが首位の座を奪い、以降基本的にグアテマラがその地位を維持しています*。

* 農産物であるため年による収穫量の変動が大きく、例えば2016年など、インドが首位にか返り咲いた年もわずかにあるようです。また、文献によっては、インド、グアテマラと並ぶ規模のカルダモン生産国として、インドネシアが挙げられていることがあります(例えば資料[9])。ただし、インドネシアで生産されているカルダモンの多くは、ジャワカルダモンと呼ばれるもので、Elettaria cardamomum(いわゆるグリーンカルダモン)とは見た目も異なる別の種であるとのことです[10]。

2.5. 国際マーケットにおけるシェア

国際マーケットにおけるシェアで見ると、生産比率とはまた違った構図が見えてきます。図4に国際マーケットにおけるカルダモンの国別シェア(1995-1998)を示します。

国際マーケットにおけるカルダモンの国別シェア
図4. 国際マーケットにおけるカルダモンの国別シェア(1995-1998)[※3]

インドでは生産されたカルダモンの大半が国内で消費されるため、輸出される量はわずかです。これに対しグアテマラからはほぼ全量が輸出されます。そのため、国際マーケットのシェアで見るとその約9割をグアテマラが占めています。日本に入ってくるカルダモンの多くもグアテマラ産です。近年では国際マーケットにおけるインドのシェアが1割程度まで回復してきているようですが[※2]、今なお9割近くをグアテマラが占めている事実には変わりありません。

3. カルダモンの消費

3.1. カルダモンの消費国

図5にカルダモンの国別消費比率(1995-1998)を示します。消費国で見ると、サウジアラビアとインドの2か国で世界の半分以上のカルダモンを消費しています。

カルダモンの国別消費比率
図5. カルダモンの国別消費比率(1995-1998)[※4]

サウジアラビアには、ガワ(Gawha/Qahwa)と呼ばれるカルダモンコーヒーを飲む習慣があります。カルダモンコーヒーには30~60%のカルダモンが含まれ[1]、これがサウジアラビアにおける大量のカルダモン消費につながっています。インドではカルダモンはカレーや紅茶(マサラチャイ)にはなくてはならないスパイスとなっています。その他の消費国は、クウェート、ヨルダン、カタール、アラブ首長国連邦、日本、シンガポール、ロシア、英国、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークなどです[1]。最初の4か国はサウジアラビア同様コーヒーなどにカルダモンを使うアラブ諸国、最後の4か国はお菓子などにカルダモンを使う北欧諸国になります。

3.2. ひとりあたりのカルダモン消費量

図6に国別のひとりあたりのカルダモン消費量を示します。

国別のひとりあたりのカルダモン消費量
図6. 国別のひとりあたりのカルダモン消費量[※6]

ひとりあたりの消費量ではサウジアラビアが突出しています(300g超)。インドとサウジアラビアの国単位での消費量は同程度(図5参照)ですが、サウジアラビアの人口は約2000万人(2000年)[6]とインドの人口(10億人超)[7]の約50分の1でしかありません。そのためひとりあたり消費量はサウジアラビアのほうが圧倒的に多くなります。なお、近年のカルダモンの輸出入[9]から推計すると、アラブ首長国連邦やクウェートなど、サウジアラビアに隣接するアラブ諸国もひとりあたりの消費量が数百グラムに及ぶようです。一方、インドの一人あたり消費量は年間約9gとそれほど多くありません。インドは貧富の差が大きく、地域的な食文化の差があることがその理由ではないかと考えます。インド以上にひとりあたり消費量が多いのが、カルダモンロールで知られるスウェーデンや同じく焼き菓子にカルダモンを使うフィンランドなどの北欧諸国です。これらの国のひとりあたり消費量は14~15gと、欧州平均の3gを大きく上回っています。サウジアラビア・インドのデータと欧州のデータは調査年に違いがあるため比較には注意が必要ですが、フィンランド・スウェーデンのひとりあたり消費量が現在でもインドと同等以上であることは確実と思われます[※5]。


カルダモンの生産・貿易・消費に関しては入手できたデータが限られるため、いくつかの数字については仮定に基づく推定値を用いています。また、入手できた情報は古いものが多いため、現在とは状況が異なる可能性があります。資料により、統計方法や「カルダモン」の指す範囲(いわゆるグリーンカルダモン以外のカルダモンも含むかどうかなど)が違うため、新しい情報と比較を行う場合にも注意が必要です。

※1 各年代の平均生産量(トン/年)には以下のデータを用いた。1970s:文献[1]表2.1の世界生産シェアと世界総生産量から求めた。値は1970-1980のデータの平均値を採用した。1980s:出典は1970sに同じ。値は1980-1981、1984-1985、1985-1990の平均値を採用した。1990s:出典は1970sに同じ。値は1990-1980のデータの平均値を採用した。値は1900-1995、1995-1998の平均値を採用した。2000s:データ入手できず。2010s:インドのデータとして資料[4]の2014-2015の推定値(18,000トン)を採用した。グアテマラのデータとして資料[5]の2016-2017の推定値(32,000~35,000トン)からその中央値33,500トンを採用した。その他地域についてはデータが入手できなかったため、1970sから1990sのその他地域の生産量増加率(1.85倍)をあてはめ、1990sの1.85倍と仮定した。

※2 資料[4]によると、2014-2015シーズン(1年間)のインドからのカルダモン輸出量は3,795トンと推定されている。一方、資料[5]によれば2016-2017シーズン(1年間)のグアテマラにおける生産量は32,000~35,000トン(ここでは中央値33,500トンを用いる)と推定されている。このインドからの輸出量とグアテマラにおける生産量の合計を国際マーケットへの総供給量と仮定すると、インドのシェアは、10%に相当する。実際にはその他生産国からの供給もあるためシェアはこれより小さくなるが、その他生産国からの供給量は全体の1割以下のため、その変動も1%(10%の1割)以下とみなすことができる。したがって、インドの国際マーケットにおけるシェアはほぼ10%と推定される。

※3 各国の1995-1998の年平均輸出量として以下のデータを用いてマーケットシェアを求めた。インド・グアテマラ:文献[1]表2.58のデータから1995-1998における両国の年平均輸出量を求めた。その他地域:データが入手できなかったため、文献[1]表2.1のデータからその他地域の1995-1998の年平均生産量を求め、その半分を輸出量と仮定した。

※4 各国の1995-1998の年平均消費量として以下のデータを用いて比率を求めた。インド・サウジアラビア:文献[1]表2.59のデータから1995-1998における両国の年平均消費量を求めた。その他地域:文献[1]表2.1のデータから1995-1998の世界の年平均総生産量を求め、そこから前記のインド・サウジアラビアの年平均消費量を引いた残りをその他地域の消費量とした。すなわち、世界の総生産量=世界の総消費量と仮定した。

※5 最近のデータとして、資料[4]によると、2014-2015シーズン(1年間)のインドにおけるカルダモンの生産量は18,000トンと推定されている。ここではこの生産量をインドにおける消費量と仮定する。一方、世界銀行の人口データ[7]によると2015年のインドの総人口は13億1000万人とされている。この2つのデータを用いると2015年におけるインドのひとりあたり消費量は13.7gと推定される。

※6 各国のひとりあたりカルダモン消費量には以下のデータを用いた。インド・サウジアラビア:文献[1]表2.59の2000年におけるそれぞれの国の年間消費量をそれぞれの国の2000年の人口[6][7]で除して求めた。ヨーロッパ各国:資料[8]の図3から、2017年におけるフィンランド、スウェーデン、欧州平均のデータを抜粋した。

参考文献

[1] Prabhakaran Nair, K.P. (2011) 2 - The Agronomy and Economy of Cardamom. In: Agronomy and Economy of Black Pepper and Cardamom, Elsevier, doi:10.1016/B978-0-12-391865-9.00002-5

[2] Ravindran, P. N. (2002) Cardamom: The Genus Elettaria (Medicinal and Aromatic Plants - Industrial Profiles) . Taylor & Francis

[3] Kusters, K. and Belcher, B. (2004) Chapter 9 Cardamom (Elettaria cardamomum) in Kerala India. In: Livelihoods and Conservation: Case Studies of Non-Timber Forest Product Systems. VOLUME 1 – ASIA, Centre for international forestry research

[4] Multi Commodity Exchange of India Limited (2016) CARDAMOM, https://www.mcxindia.com/docs/default-source/products/spices/cardamom_leaflet_270116.pdf?sfvrsn=2 (2020/3/23閲覧)

[5] ROYAL SPICES (2017) http://www.guatemalacardamom.com/ (2020/3/23閲覧)

[6] The world bank (2019) Population, total - Saudi Arabia. https://data.worldbank.org/indicator/SP.POP.TOTL?locations=SA (2020/3/23閲覧)

[7] The world bank (2019) Population, total - India. https://data.worldbank.org/indicator/SP.POP.TOTL?locations=IN (2020/3/23閲覧)

[8] The world bank (2019) Population, total - India. https://www.cbi.eu/market-information/spices-herbs/cardamom/ (2020/3/23閲覧)

[9] Codex Alimentarius Commission (2018) JOINT FAO/WHO FOOD STANDARDS PROGRAMME CODEX COMMITTEE ON SPICES AND CULINARY HERBS, PROPOSALS FOR NEW WORK, Food and Agriculture Organization

[10] AHMAD DWI SETYAWAN et al. (2014) Short Communication: Comparisons of isozyme diversity in local Java cardamom (Amomum compactum) and true cardamom (Elettaria cardamomum), NUSANTARA BIOSCIENCE 6(1), pp.99-101